ファセル・ヴェガは、アルミ製家具や自動車用アルミボディ製作メーカーとして知られていたファセル・メタロン社主ジャン・ダニノスが、ドラージュやドライエなど第二次大戦後に死滅してしまったフランス製高級車の復活を夢見て、1954年に立ち上げた自社ブランド。北米クライスラー製V8エンジンを搭載したファセル・ヴェガ各車は、豊かなサイズを生かした伸びやかでエレガンス極まるスタイリングと、家具メーカーならではの技術を流用した木目調パネルとレザーで覆われたゴージャスなインテリアなどを特徴とする。アルベール・カミュやスターリング・モスなど、当時の欧州のセレブリティが挙って愛用したクルマとしても知られる。中でもファセルIIは、戦後フランスで唯一の高級車ともいえるファセル・ヴェガが最後に製作した超豪華クーペ。あくまで低くスマートなボディラインは、時代のあだ花のごとく咲いたファセル・ヴェガのフィナーレを飾るに相応しいものである。