メルセデス・ベンツ540Kは、1936年、従来の500Kに代わるメルセデス最高級ツーリングカーとしてデビュー。ポスト・ヴィンテージ期においては、この540Kは世界で最も豪華かつ高性能なパーソナルカーのひとつで、当時の王侯・貴族からハリウッドスターまで、あらゆる階層の富裕層のシンボルとなった。パワーユニットは直列8気筒OHV5.4リットルで、通常でも115psを発揮するが、特に加速力を要する時は、さらに深くペダルを踏み込むと「ワルキューレの雄叫び」と形容された作動音とともにルーツ式スーパーチャージャーが作動、180psに到達した。この時期の高級車としては珍しく、メルセデスはコーチビルダー向けのローリングシャシーの販売は原則的に行わず、ほとんどは自社のジンデルフィンゲン工場コーチワークまで行われた。しかし自社製のボディとはいえ、華麗なデザイン、入念な作り込みともに、ほかの老舗コーチビルダーの作品に勝るとも劣らないものであった。