ブガッティT57は、エットーレ・ブガッティの後継者と目された長男ジャン・ブガッティが、父親譲りの素晴らしい才能を遺憾なく発揮した傑作。T49用の直列8気筒3.3リットルDOHCに、直方体にこだわる父エットーレが最後まで拒否し続けたDOHCヘッドを組み合わせたスーパーモデルである。ポスト・ヴィンテージ期のフランス車としても、最上級の高級スポーツカーとされる。ボディは、この "ヴァントー" コーチを含めたほとんどがジャン自身のデザインで、コーチワークはブガッティと関係の深いカロジエ・ガングロフに委ねられた。同時代のロールス・ロイス25/30HPにも匹敵する超高級車ながら、販売台数では総計680台と歴代の8気筒ブガッティでは最大の成功を得るに至った。今回の出品車は、1950年代に故波嵯栄菩(ボブ・ハセー)氏が日本に持ち込んで以来、その遺志を受け継ぐ愛好家たちによって大切に継承されてきた、我が国の自動車文化財とも言うべき一台である。